北海道エナジートーク21 講演録

 
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北海道エネルギー環境教育研究委員会

'11新春講演会『地球温暖化問題の今』
【第二部】 トークセッション〜求められる温暖化対策〜

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'11新春講演会『地球温暖化問題の今』 【第二部】 トークセッション〜求められる温暖化対策〜
 

  21世紀政策研究所 研究主幹 澤 昭裕 (さわ あきひろ) 氏
  北海道大学大学院工学研究院 准教授 小崎 完 (こざき たもつ) 氏
  フリーアナウンサー 橋本 登代子 (はしもと とよこ) 氏
     

橋本 では、第2部を始めさせていただきます。まず小崎先生から、国のエネルギー基本計画で基軸とされ、地球温暖化対策の柱であるといわれる原子力について、現状と課題などを解説していただきます。それでは小崎先生、自己紹介からお願いいたします。

 

小崎  皆さん、こんにちは。私は北海道大学で原子力の研究・教育に携わっており、小崎 完 氏放射性廃棄物の処分に関する研究を専門としています。地下の深いところでの放射性物質の移行挙動が研究の中心です。放射性同位元素を使った実験などで普段は実験室にいることが多いので、今日はとんでもないところに来てしまったと後悔しています(笑)。どうぞ宜しくお願いいたします。

 これからお話しさせていただく「原子力の現状と課題」というテーマには、原子力の環境性、経済性、安定性、安全性、可能性という5つのポイントがあります。さらに、原子力が今直面している課題について触れさせていただきます。

 

原子力の環境性

小崎 まず「原子力の環境性」についてですが、先ほど澤先生のご講演にもあったCO2の問題が、原子力ではどのような位置づけになっているかについてお話しします。

各種電源別のCO2排出量

 これは、1kWhの電気を作るためにCO2をどれくらい出しているかという図です。中国で多く使われているという石炭火力は、1kWhの電気を作るのに約1kgのCO2を出します。原子力は核反応で発電するのでCO2を出しません。つまり原子力には、CO2排出量が非常に少なくて済むというメリットがあり、地球温暖化への強力な対抗策になると思います。

 身近なところで、北海道には泊発電所があります。泊3号機は2009年12月に運転を開始し、まるまる1年間動き続けてくれましたが、これで北海道全体のCO2排出量の約7%に当たる約500万トンを削減できました。このようにパワフルな電源ですから、もっと活用するべきだと思います。

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原子力の経済性

小崎 続いて「原子力の経済性」です。先ほど、環境税など懐が痛くなるようなお話がありましたが、その点、原子力は低発電コストです。

主要エネルギー源の発電コスト

 これは発電コストに関するデータですが、太陽光は1kWhの電気を作るのに約50円かかります。原子力は5〜6円です。太陽光の9分の1〜10分の1のコストで発電できます。

 このデータを示すと、多くの方は「放射性廃棄物を処分する費用を考えると、結局高くなるんじゃないの」とおっしゃいますが、内訳を見ると、発電所を作るのに約3分の1、運転管理で約3分の1。残りが燃料費ですが、燃料費の中には、再処理をしたり廃棄物を処分したりする費用が入っています。皆さんの電気代の中にもこの分が全部入っていて、積み立てられています。ですから、それら全部を含めて5〜6円で発電でき、経済的にも非常にメリットがあると言えます。

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原子力の安定性

小崎 次に「原子力の安定性」についてお話しします。一度燃料を入れて原子炉で発電を始めると、1年間くらいは大量の電気を安定的に供給することができます。もう一つはエネルギーセキュリティという点で、燃料を安定的に確保できる利点があります。

世界の既知ウラン資源量の分布

 これは世界のウラン資源量の分布を示した図ですが、特にどこかに集中しているわけではなく、世界中に分布しています。これに比べ、石油はほとんど中東のあたりに集中しています。ですから、ウランの場合は、世界のどこかでトラブルがあっても別の地域から手に入れることができます。中国から輸入しているレアアースのように、一国からの輸入に大半を頼るということがありません。このようなセキュリティ上のメリットがあります。

世界のエネルギー資源確認埋蔵量

 現在、エネルギー資源はどれくらいあるかについてですが、資源が広く分布していても量がなければどうしようもありません。ウランの場合は、あと100年くらいは大丈夫でしょう。しかし、これは安心できるほどの埋蔵量ではありません。そこで現在は、使用済燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、原子力発電所で再び使うというプルサーマルを進めようとしています。これを進めると、1〜2割程度の燃料の節約になります。100年分の資源を120年分くらいに増やすことができます。

小崎 完 氏  しかし、私たち原子力研究者はその先のことを考えています。高速増殖炉というのがあり、その実証炉として「もんじゅ」が頑張っていますが、これを使うとウラン資源を最大に使うことができます。発電しながらプルトニウムをどんどん増殖させることができます。それによって燃料が25倍使え、約2500年分まで延ばすことができます。あと2500年あれば、いずれ人類は新しい技術を生み出せるだろうと考えています。ですから今は、今後2500年使える技術を確立することが、原子力研究者にとって最大のテーマとなっています。

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