北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09「原子力の日」記念フォーラム
(5-2)
    低炭素社会とエネルギー問題 〜CO削減目標と核燃料サイクル〜

    【第一部】     低炭素社会へ向けたCO削減目標の実効性



エネルギーにはどんな種類があるか

秋 元   エネルギーの種類について具体的にお話しします。

文明自立への二つの道

 いま注目されているクリーンエネルギーは、大きく分けて2つあります。ひとつは太陽からくるエネルギー、もうひとつは地球自前のエネルギーです。再生可能エネルギーや新エネルギーといわれるものの多くは、太陽からくるエネルギーです。非常に親しみやすくわかりやすいものですが、本質的な問題がいくつかあります。

 地球全体の熱バランスのうち99.5%は太陽からくるエネルギーで、非常に膨大です。残り0.5%は地球の中から出てくる地熱です。このように、太陽からのエネルギーは量的に見ればまだまだ使えそうですが、地球の表面全体にばらまかれるため、表面積あたりのエネルギーとしてはかなり薄くなります。

太陽光・風力発電の出力変動

 また、自然のエネルギーは非常に変動が大きく不規則です。太陽光は昼間しか得られず、雨の日も難しい。風力の場合、風が強すぎても弱すぎてもいけない。
 このように、太陽からくるエネルギーの問題点は「広範囲に分散するエネルギーを集めにくいこと」「条件が変動しやすいこと」「貯めておけないこと」の3つに集約できます。これらの課題を解決しないと、太陽からくるエネルギーをうまく使うのは難しいでしょう。その点、植物は何億年もかけて太陽からのエネルギーを取り込んで使い、何代も生き長らえる方法を知っているわけで、こうした植物の知恵を私たち人間は学ぶ必要があります。

 いまの太陽電池の中には、太陽エネルギーを集める効率という点で、植物よりも性能の優れたものが出てきました。ただし、実際に使おうとすると非常に大きな面積が必要です。太陽電池を使って原子力発電所1基分と同じくらいのエネルギーを取り出そうとすると、例えば北海道では洞爺湖の湖面を全部太陽電池で埋めて、エネルギーを集めることになります。湖の下では光が十分に入りませんから、水草も生えないし、魚も生きてゆけなくなる。太陽電池を置く場所によっては、生態系の営みに影響が及ぶことになります。

黒部ダム

 再生可能エネルギーの中で貯める機能の優れているのが水力で、非常に効率の良いエネルギーです。私も去年黒部ダムを訪れ、その規模の壮大さに打たれました。しかしこの広大なダムですら、原子炉の3分の1くらいの電気しか出せないわけです。ダムを作るにあたって何十年という歳月がかかり、何十人もの犠牲者が出ました。自然のエネルギーを貯めるのはそう簡単なことではないと思います。

 

宮 崎   ちょっとよろしいですか。ちょうどダムの話が出たので、橋本さんにうかがいたいと思います。最近の報道では八ッ場ダムの建設工事中止が話題になっていますね。橋本さん、それについて一言お願いします。

 

パネリスト橋本五郎氏橋 本   政権が代わるとすっかり、政治の光景が変わり、143のダムを全部建設中止にしようというのが民主党のマニフェストです。これは相当衝撃的で、やり方も革命的でした。こうしたことをきっかけに、いま我々はエネルギーの役割について改めて考えなければいけないと思います。

 政権交代によって問題を根本から考え直そうとしたことは評価すべきですが、一方で考えることもあります。八ッ場ダムの建設中止について、前原国土交通大臣のやり方は失敗だと思う。今回の場合、最初にやるべきことは地元に行って、50数年間にわたって苦しんできた人たちの思いを先に聞くことだったはずです。143にはダムのそれぞれ歴史があり、顔がある。だから、それに長い間関わってきた人たちに敬意を表し、話をよく聞くことから始めるべきだった。順序が逆だったと思います。

 「コンクリートから人へ」という新政権のスローガンがありますが、ダム建設中止の議論は、ダムの功罪とはどういうものか、エネルギー全体での位置づけなどについて、私たちが改めて考えるきっかけになると思います。その意味で、この問題ができるだけいろいろな角度から論じられればいいと考えています。

 

宮 崎   八ッ場ダムの建設をやめたことにつてはどうお考えですか。

 

橋 本   八ッ場ダムについては、これまでに7割以上できているわけですから、そのまま建設を進めるほうがいいかもしれないと私は思います。いずれにしても、もう少し議論すべき問題だと思いますね。

 

宮 崎   最終的には歴史が評価するのかもしれませんね。また後ほどお話をうかがいたいと思います。秋元さん、中断して申し訳ありません。続きをお願いします。

 

秋 元   いま話題に出た水力のメリットですが、いわゆる持続可能エネルギーの中では、貯めておいていつでも使えるという点で、水力が最もポテンシャルが高いと思います。また、もしも電力が足りなくなった場合、他の電源を使って水をダムに押し上げるなどして蓄電池のようにも使えます。そのように、ダムの存在価値をもう一度考えたうえで、見直すことが必要ではないかと思います。

パネリスト秋元勇巳氏 もう一つ、持続可能エネルギーを評価する大事な指標として「EPR(Energy Profit Ratio)」というのがあります。

 例えば、発電所を建設するためには機材やエネルギーが必要で、建設後に運転していくあいだにもエネルギーを使う。発電所の役目が終わったら、それらをきちんと解体して、廃棄処分をしなければなりません。そのように、発電所施設そのものが、生涯を通じてさまざまにエネルギーを使います。しかし、使う以上にたくさんのエネルギーを作り出せるから、そのエネルギー施設は存在価値があるわけです。その生涯のあいだに使うエネルギーに対して、何倍くらいのエネルギーを作り出せるのか。それを示すのが、このEPRです。

電気を得る手段(発電)をEPRで評価

 この図では、太陽光や風力などいろいろな例を示していますが、多くは数倍以下の数値です。中には1より低いものもあります。1より低いということは、発電所施設を作り運転するために使うエネルギー分の、元を取らないうちに施設の寿命がくるという意味ですから、エネルギー施設としては不合格ということになります。

 その点で見ると、中小水力が15.3で、かなりがんばっています。水力の場合はダムや、発電所を作りますが、それに費やしたより15倍以上のエネルギーを出すことができる。これくらいなら合格といえるはずです。実は、原子力はこれよりもっと指数が高いのです。

 先ほどご紹介した太陽起源エネルギーの場合は、入射エネルギーの密度が低いうえ、出力が安定しないため、いきおい設備は巨大になる。作るにも解体廃棄するにも多大のエネルギーが必要ですから、EPRが低くなる。そうは言っても、再生可能エネルギーが役に立たないとは思っていません。分散電源として系統電源の及ばないところでキメ細かく活用するには非常に大事な電源です。ただ、基幹電源としてすべてをまかなおうとするのは無理だと思います。

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