北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
パネルディスカッション
 地球温暖化とエネルギー問題 〜なぜ今、核燃料サイクルなのか〜

 
(4-4)
    【第一部】 「北海道洞爺湖サミットの結果をふまえた
地球温暖化と日本のエネルギー事情」

原子力以外のエネルギーはどこまで有望か

宮 崎    さて、ここまでのところで、地球環境問題やエネルギー問題を解決するには、どうやら原子力がカギを握っているらしいことが見えてきました。一方でチェックしておきたいのが、炭酸ガスを出さない自然エネルギーなどの可能性はどうかという点です。これについてはいかがでしょう。


中 村    自然エネルギーについては、その国に合う自然を利用するのがいちばんいいと思います。先月、中国のゴビ砂漠に行きましたが、とにかく見渡す限り風力発電所が並んでいます。幅10kmくらい、奥行100kmくらいにわたって何千、何万と並び、風速約10mの風が常に吹いています。そういう良い場所が日本にはありません。

 また、アメリカはここ10年以内に自動車のガソリンの20%をアルコールに置き換えようとしている。原料はトウモロコシです。アメリカの農場は非常に広いでしょう。北海道にも広い農場はありますが、とてもじゃないがそれだけアルコールを作る能力はないと思います。10年後に50万キロリットルを作ると言っていて、関係者は皆無理だと考えていますが。

 日本でいちばん豊富な自然エネルギーは地熱です。でも、どこも温泉がありますから、地熱発電所は53万kW以上に増えないんです。残念ながら、日本では一人あたりの自然が少ないから、一人あたりの自然エネルギーも少ない。ですから、その不足分を技術で補うのが良いと思います。太陽光発電や風力発電も技術ではありますが、技術だけでまかなえるのは原子力だろうと思います。


秋 元    ここで資料をご覧ください。2050年で半減という目標を本気で達成しようとするなら、どこまで電力の構成を変え、乗用車の技術を進歩させなければいけないのかという問題です。地球環境産業技術研究機構(RITE)という日本の研究施設が試算した例を見ていただきたいと思います。

【世界の発電電力量】
グラフ
(出典:(財)地球環境産業技術研究機構ホームページhttp://www.rite.or.jp)

 【資料解説】 上の図は、そのまま成り行きに任せたら石炭火力や原子力、水力などがどう伸びるかというものです。下のグレーの部分は石炭です。つまり成り行きでは石炭火力が半分以上を占めてしまう。ただ、これでは炭酸ガスの量は大きく増えてしまいます。

 下の図は政府が温暖化防止の長期目標としている「クールアース50」に副って半減させるにはどうしたらいいかを示しています。

 これを見ると、グレーの石炭火力は2050年でほとんどゼロにしなければならない。薄いグレーも、石炭火力ですが、発生した炭酸ガスを全部地層に戻すCCS(CO2回収・貯留技術)を使うという条件付きです。石油などの化石燃料も含み、今後建設する発電所はCCSを100%近くやる。太陽光発電も9%くらいに増やし、風力発電も6%、原子力は今の4倍くらい増やします。原子力も、今の原子炉ではなく次世代原子炉を導入する。太陽、風力についてもこれだけの量をまかなうには、更なる技術革新をして、発電コストを大幅に下げないといけません。

【世界の乗用車技術選択】
グラフ
(出典:(財)地球環境産業技術研究機構ホームページhttp://www.rite.or.jp)

 【資料解説】  これは自動車の構成がどうなるかの例ですが、赤い部分はプラグインハイブリッドです。家に帰ってからプラグを差し込んで充電して使う電気自動車です。こういう車がクリーンな電気を使い、80%くらいのシェアを占めるようになれば、半減できる理屈ですが、なかなか大変なことです。

 産業界としては、やれと言われてやれないとは言えないが、そのためには国を挙げての一大決心と技術革新が必要です。しかもこれはわが国だけでなく、途上国にも技術を移転して、政策誘導を行って、世界全体で達成しなければならない。


中 村    火力発電所に全部CCSをつけるといいますが、ただでできる技術ではないですね。火力発電所から出た二酸化炭素を液体などにして地下に埋め込むのにもエネルギーがいるわけでしょう。発電所で得られたエネルギーの3割くらいをそこで使うのですから、ばかばかしいですよ。


宮 崎    埋めるためにまたエネルギーがいると、悪循環になってしまいますね。さて、前半はひとまずここで区切ろうと思います。
 後半は、ここまでに見えてきた具体論をどう動かしていくのか、私たち一人ひとりにどう関わっていくのかなどについて話し合いたいと思います。


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