秋 元
勇ましい数字ばかり飛び交うのも困った風潮ですが、半減はともかく、努力してかなりの成果を上げることは可能だと思います。
というのは、1973年のオイルショックを思い出してみてください。電気が来なくなり、夜にネオンサインが消え、地下鉄の照明も間引かれ駅も薄暗い状況でした。あのときに比べると今は石油の値段ももっと高く、オイルショックが起きてもおかしくない状況ですが、我々は今日も比較的平穏に暮らしています。なぜかというと、当時から今までの間に、日本は技術を進歩させ社会インフラをすっかり変えたからです。1973年には電力のほとんどを石油に依存している状況でしたが、今は1割くらいしか依存していません。さらに、あの時代にはほとんどなかった原子力が、今は日本の電力の約30%を支えています。原子力は非常に安定していて、石油の値段が少々上がっても大丈夫だし、炭酸ガスを出す心配もありません。そういうベースがあること
が、日本にとって大きな力になっていると思います。
(出典:IEA Energy Balance 2004)
また、日本は省エネ技術では世界一です。
【資料解説】これは日本を1としたときに、同じ付加価値を上げるのにどれくらいエネルギーを使うのかについて、各国を比較したデータです。日本はダントツの1位です。ヨーロッパは日本と同じものを生み出すのに1.6倍、アメリカは2.7倍、ロシアは15倍もエネルギーを使っています。
日本はここまで省エネ技術を向上させましたが、にもかかわらず、先ほど奈良林さんのお話にあったように家庭の電力は増えています。これだけ便利になると、今まで一家に1台だったテレビが2台、3台と増え、各部屋にエアコンがほしいという家庭も出てきます。そうなると、省エネ効果が台数の増加で打ち消され、日本は努力していなかったかのような錯覚に襲われますが、実は、日本は世界最高の技術で貢献しているのです。
(出典:経済産業省平成17年5月 京都議定書の目標達成に向けた取り組みをグラフ化)
【資料解説】先ほどはどれくらいエネルギーを使うのかで比較しましたが、これは同じ付加価値を導くためにどれくらい炭酸ガスを出すかで比べた図です。日本を1としてヨーロッパ1.6は変わりませんが、アメリカは、エネルギー比較では2.7倍でしたが、炭酸ガスでは3.2倍。なぜかというと、アメリカは車社会のうえに、ここ25年間原子力発電所を作らず、石炭や石油エネルギー依存が増えている。中国は、電力はほとんど石炭ですから、9倍が12.2倍にもなる。
先ほど中村さんのお話にあったように、電気を使っても、電気を生み出す燃料がクリーンでなければ意味がない。日本の場合は電気そのものもかなりクリーンに作るし、使う側でも、省エネ機器を先駆けて開発していく活動では、日本は世界のトップレベルにある。日本は世界をリードしていくいいポジションにあると思います。
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