山本

日本は世界でどれくらい幸福な国かをご存じですか。2015年国連レポートによると、世界一幸福な国はスイス。こうして見ると、世界で幸福な国は先進国ばかりですね。ブータンが世界一幸福だという話を聞いたことはありますか。2年半ぐらい前にブータンの皇太子が新婚旅行で日本を訪れ、テレビのワイドショーでは「世界一幸福な国ブータン」と紹介されました。しかし、ブータンの幸福度は世界79位です。
実は、ブータンが世界一幸福な国といわれているのには理由があ ります。国勢調査をしたときに「とても幸せ」「幸せ」「不幸」という回答が3つあり、そのうちどれか一つに○をするというものでした。「わからない」とか「どっちでもない」という欄もありませんでした。すると国民の97%が「とても幸せ」か「幸せ」に○をつけたので、世界一幸せな国となっていますが、そのアンケートの方法に問題がありますね。
実はブータンは、世界中の社会学者から「なんだ、このアンケートは」と言われたので、5年後にもう1回アンケートをやり直したら「幸せ」という人は40%ちょっとしかいなかったということです。やはり経済力、お金がないと、人間はなかなか幸せにはなれないというのが正直なところだと思います。
日本はといえば、世界46位。前回の国連の調査も同じくらいです。いまの日本の幸福度は韓国、台湾と同じです。
世界に先進国は40カ国もありません。ヨーロッパの国々と、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本。その中で日本が46位というのは先進国といえるのか。どうしてこういうことになったのか。最初にお話ししたように、我々の給料はこの20年間減っています。そのことと幸福度は密接に関係しています。

これは、日本人一人当たりのGDP(国内総生産)。簡単に言うと、国民一人当たりの儲けです。皆さんの給料はこの中から払われています。ということは、GDPが増えないと給料は増えません。20年間の推移で日本はどうなっているかと言うと、1995年は世界3位です。8カ国しか載っていませんが、200カ国を入れても世界3位。日本は、過去最高は1994年の世界2位です。ルクセンブルクの次に世界で豊かな国は日本でした。それがどんどん他の国に追い抜かれます。これが「失われた20年」ですね。
いま、ルクセンブルクの一人当たりのGDPは日本の3倍、スイスは日本の2倍。スイスが世界一幸せな国になるのもうなずけます。日本の半分ぐらいしか儲けのなかったオーストラリアやシンガポールも、日本を追い抜いています。いまアジアで一番豊かな国は、もう日本ではありません。シンガポールです。これが「失われた20年」がもたらした結果です。非常に残念なことです。

このグラフは、一人当たりのGDPについてアメリカを100%として比較したものです。日本はアメリカの3分の2程度。主要国の中で日本より貧しい国はイタリアしかありません。さまざまな統計資料がありますが、どれを見ても、主要国の中で貧しい国は日本とイタリアです。
2014年には、平均給与で日本は韓国に一度抜かれます。韓国人のほうが日本人より給料が高いという結果でした。もちろん、為替の問題があるので年によって変動し、2015年には日本はまた追い抜いています。残念ながら、それくらい日本は力をなくしています。
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