奥家 まず蓄電池は、再生可能エネルギーの導入が早いスピードで動いている北海道と東北で、先ほど澤先生のお話にあった“小さい桶”にあたるものを置こうという取り組みを始めています。具体的には、北海道では「レドックスフロー」というタイプ、東北は「NAS」というタイプの蓄電池を変電所の横に置くというものです。
これによって、再生可能エネルギーが“風呂桶”に入る前に一回受け止めて、安定的に落とせる工夫をしているということです。ただし蓄電池については、非常にコストが高い。
いままで、エネルギーを貯めておくというのは、揚水といって夜のうちに上の池に水を汲んでおく方法があります。昼間に必要になったときに水を落とすと、5分ぐらいであっという間に出力ピークに持っていくことができます。基本的に水を流しているだけなので安いと思うかもしれませんが、揚水は電気を使って水を揚げます。ただし使うのは一瞬だけなので、例えば太陽光は40円でも高いという話になるんですが、揚水はkWhの値段でいえば2.3万円。
蓄電池を使うと、価格競争ではまだ揚水にはるかに及ばない状況です。私たちもいま技術開発を一生懸命やっていますが、目標は揚水並みのコストになるように急ぎましょうという状況。蓄電池は現状ではまだ高いので、どうコストダウンしていくかが課題です。

水素についてもまだ少し時間がかかります。一方で、水素の場合は、ガスや石炭や石油を改質して作る方法もあれば、水を電気で分解する、もしくは熱で分解するなど、いろいろな作り方があります。貯められるうえ熱効率も高い。熱も電気も作れるので、メリットは非常に大きいです。例えば、原子力から再生可能エネルギーを使って水を電解して水素を作った場合には、二酸化炭素も出ません。ただ、これもまだ時間がかかります。
また、日本は世界をリードしている国であるということはぜひお伝えしたいと思います。例えば、家庭でガスから水素を取り出して熱と電気を作るという「エネファーム」を使っている方もいらっしゃると思います。エネファームはすでに日本で7万台出ていて、一般家庭が使っているのは日本が最初です。日本のメーカーは海外で売り始めようとしています。
また、燃料電池自動車は、来年からの予定を前倒しして今年からやると言っているメーカーもいて、一般の消費者が燃料電池自動車を世界で最初に買える国は日本ということになります。
燃料電池自動車は、電気と同じように二酸化炭素が出ない方法で自動車を使えるわけですが、電気とのいちばんの違いは、航続距離が非常に長いこと。1回3分間、水素を充填すれば500kmぐらい走れます。ただし値段では電気自動車のほうがかなり安いということで、経済産業省でも、燃料電池自動車を買う場合には補助金を出してサポートしようとしています。
新しい技術は高いですが、非常に夢もある。先ほど澤先生から話がありましたが、「高いのを選びますか。いままでのものを使いますか」という、まさにその分岐点に私たちは立っています。ただ、皆さんは選べるんです。かつてはガソリン車以外選べなかったですね。しかし技術の進歩によって、値段のことも含めて自分はどういうライフスタイルを選び、何がいちばん懸念材料なのかを踏まえたうえでエネルギー選択に参画できるということですから、現在とても重要な時期に差しかかっていると思います。
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