北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
変化する国際関係とエネルギー情勢

(4-3)

●戦争・紛争とエネルギー価格

 さて、エネルギー情勢の話をしたいと思います。北海道の皆さんは、エネルギー価格に関心の高い方は多いと思います。エネルギー価格と戦争・紛争の関係についてお話をします。簡単に言いますと、無関係です。

戦争・紛争と原油価格(1910-2017)

  普通の人は、戦争があるから値段が上がるのだと言う。でも、歴史的には必ずしもそうではありません。濃い緑のところが、1910年、つまり20世紀初頭の原油価格です。1バレルあたり約10ドルでしたが上がっていきます。

 戦争と石油価格、エネルギー価格がどう連動したか、しなかったか。朝鮮戦争やスエズ動乱、キューバ危機もありましたが、値段は変わっていません。つまり戦争とエネルギー価格はこの時点では関係ありませんが、ときどきドカンと価格が跳ね上がるときがあります。1972年の石油ショックのときは、実質価格では120ドル近くまで上がっています。

 なぜこんなことが起きたかというと、1970年まではアメリカに増産能力がありました。しかし1970年にピークになりました。戦争になったら当然、供給が止まります。止まった分をそれまではアメリカが増産してマーケットに石油を出していたので値段は上がりませんでしたが、能力がピークに達したときに100ドルを超えてしまいました。

講演のようす

 では、この後にどうなるかというと、ソ連のアフガン侵攻があり、イランは戦争になり、暴騰するわけです。値段が高くなると、いろんな油田から石油が出せるようになる。ジャブジャブになって石油余りになり、20ドルまで下がります。そのときに湾岸戦争があったけれども値段は上がっていません。最近、値段が上がった理由としては、イラク戦争もありましたが、やはりインドや中国での需要増が大きな要因だと思います。それがいま少なくなったので値段が下がっているということです。

 要するに、必ずしも戦争とは関係ない。何が中東で起きて、どのように作用するかわからないけれども、いつ石油と天然ガスが止まってもおかしくない状況です。いつ止まってもおかしくないけれども、電力会社と政府が頑張っているからうまく回っています。

 先ほど言ったようにシリアやイランを壊したことで安定装置を壊してしまったわけですから、この後、湾岸地域にこの問題が波及する可能性は十分にあります。そのときには一発で石油は止まるでしょう。そのときにどうするかということを考えなくてはいけません。

●電源構成から考えるベストミックス

 電源構成を調べてみましたが、日本は結構石炭が多いですね。本来ならば、2010年に原子力は26%あったわけです。

宮家 邦彦 氏 例えばドイツはできるだけ太陽光などの再生可能エネルギーにしていきましょうと言っていますが、実は足りない分はフランスから電力を買っています。その電気をフランスは原子力でまかなっているわけです。エネルギーというのは、いつどこで何が待っているかわからないし、再生可能エネルギーは環境破壊がないからいいかもしれないけれども、太陽光は太陽が隠れたら発電できないし、風力だって風が止まったら使えません。そう考えると、使えるものは全部持っていなくてはできないということになります。その意味では、エネルギーミックスなど、まんべんなくある程度のエネルギー源を確保しておく必要があります。中東の仕事をしていたから余計にそう思います。

 いつ石油が止まってもおかしくない。天然ガスについては、取引先が多様化していますが、それでも非常に危ないと思っています。そういったことが実は毎日起きているんだけれども、我々は幸い、プロのおかげでその危険を感じずに済んでいます。こうして見ると、ある程度、原子力がなければいけない。もちろん再生可能エネルギーも必要ですが、全体としてはバランスよくやることが大事だろうと思います。

 私だって原子力は好きではありません。ああやって事故が起きてしまえばなおさらです。ただ、先日、福島第一原発に行ってきましたが、放射線量はものすごく減っています。私は実際に、1号炉と2号炉の近くに行きましたが、普通の服で行きました。少なくとも改善されてきていると考えると、原子力がダメだと言うのが本当にいいのだろうかと思うときがあります。

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