エネルギー講演会
「国際情勢を踏まえた日本のエネルギー安全保障政策」
(4-4)
●文献調査の自治体はいま
今日の話題の一つとして、北海道の寿都町と神恵内村で行われている高レベル放射性廃棄物最終処分場の文献調査があります。これは北海道だけの問題ではなく、日本人の誰もが考えなければならない問題です。
2月、北海道庁ウェブサイトで北海道知事が意見表明を行い、現時点では「概要調査に進むことには反対である」という意見を表明されました。プレスリリースを読むと、「道としては文献調査の報告書や説明会を通じて、こうした北海道の状況を広く全国の皆さまに知っていただくとともに、最終処分事業の理解促進がさらに進むことを期待しております」と、全国の多くの地域において議会の協力が得られることが重要であるということを繰り返し述べています。
ですから、単純に「北海道は受け入れない」と言ってるのではなく、「これは北海道だけの問題ではない。全国の問題なんですよ」とおっしゃりたいのだと私は理解しました。
そのご意見には賛同しますし、このような問題提起のメッセージを出してくださった北海道知事に、私は尊敬の念を持っております。
●どうする日本、どうする私たち
ここで申し上げたいのは、カーボンニュートラルという非常に美しい言葉にどういう落とし穴があるかについてです。気候変動にだけ着目して、気候変動の防止に注力すれば偉いという問題ではありません。それについて、キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹である杉山大志さんは、「2050年にCO2ゼロというのは、経済と産業への死刑宣告に等しい」と警告を発しています。
一方で、再生可能エネルギーの推進に真剣に取り組み、自分たちの生活の一部として事業活動をしている方も北海道にはたくさんいらっしゃいます。
2024年2月、北海道南部の「函館渡島檜山ゼロカーボン北海道推進協議会」が函館で設立記念シンポジウムを開催しました。その中でさまざまな地産地消の再生可能エネルギーの取り組みが紹介されました。地域に根づき、地域の方々も支持して、自分の事業、自分のエネルギーとして活動しているのであれば、私としてはぜひ応援を申し上げたいです。
●三兎を追え!
日本のエネルギー政策では、はっきりと政府は「三兎を追え=3つのEを追いかけなさい」と言っています。決して荒唐無稽なことではなくて、誠にもっともなことであります。
GX基本戦略などの道筋も示されているので、頑張らなければなりませんが、しかし無理のないように、地域の方々が意欲を持って自ら取り組もうと進めるのは良いことだと思います。少なくとも無理強いをするような話ではないということを申し上げたいと思います。