小崎 次に「原子力の安定性」についてお話しします。一度燃料を入れて原子炉で発電を始めると、1年間くらいは大量の電気を安定的に供給することができます。もう一つはエネルギーセキュリティという点で、燃料を安定的に確保できる利点があります。

これは世界のウラン資源量の分布を示した図ですが、特にどこかに集中しているわけではなく、世界中に分布しています。これに比べ、石油はほとんど中東のあたりに集中しています。ですから、ウランの場合は、世界のどこかでトラブルがあっても別の地域から手に入れることができます。中国から輸入しているレアアースのように、一国からの輸入に大半を頼るということがありません。このようなセキュリティ上のメリットがあります。

現在、エネルギー資源はどれくらいあるかについてですが、資源が広く分布していても量がなければどうしようもありません。ウランの場合は、あと100年くらいは大丈夫でしょう。しかし、これは安心できるほどの埋蔵量ではありません。そこで現在は、使用済燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、原子力発電所で再び使うというプルサーマルを進めようとしています。これを進めると、1〜2割程度の燃料の節約になります。100年分の資源を120年分くらいに増やすことができます。
しかし、私たち原子力研究者はその先のことを考えています。高速増殖炉というのがあり、その実証炉として「もんじゅ」が頑張っていますが、これを使うとウラン資源を最大に使うことができます。発電しながらプルトニウムをどんどん増殖させることができます。それによって燃料が25倍使え、約2500年分まで延ばすことができます。あと2500年あれば、いずれ人類は新しい技術を生み出せるだろうと考えています。ですから今は、今後2500年使える技術を確立することが、原子力研究者にとって最大のテーマとなっています。
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