秋 元
ごく最近、IAEA(国際原子力機関)が原子力発電の中期目標の見通しを上方修正しました。現在は世界に432基の原子力発電所がありますが、2030年には810基、少なくとも510基くらいには伸びると予測しています。去年の予測に比べて8%伸びるという予測を出しています。IAEAがそういう予測を出した根拠としては、特に極東や東欧での伸びが著しいといわれており、実際に新しい原子炉の建設が始まっています。

全体についてご紹介します。この図のように、エネルギー政策の揺らいでいるアメリカでも古い原子炉を新鋭の原子炉の新設で補っていくことについての方針は変わらないようです。中国はまだ少数しか動いていませんが、計画されている分は膨大な数です。
フランスは自国内で日本と近い数字です。日本では53基、フランスでは58基の原子炉が動いていて、資源の少ないフランスでは原子力の割合が80%に上っています。フランス国民一人あたりのCO2排出量は年間約8トン。これは他のヨーロッパの諸国の平均値より約40%も低い量です。フランスは新しい原子炉の建設もしているし、中国やアメリカ、イギリス、イタリアなどから原子炉の受注もしています。

また、ヨーロッパの国々はそれぞれ独立していますが、エネルギーの面から見ると一つのまとまった国といえます。左図は天然ガスのパイプラインでヨーロッパ全体が一つにつながっています。右図はフランスから送られている電気の量です。
ドイツでは大連合の旧政権は原子力を段階的に廃止する方針を出していましたが、新しく政権が代わったことで、今ある原子炉の寿命を延ばし、更には原子炉も新しく建設しようという積極路線に変わるだろうと考えられます。現実には、いまでも原子力反対を唱えながら、原子炉で生まれた大量の電力をフランスから買わざるを得ない状況なのですから。
イタリアでは原子力による電力を直接買ってはいけないという法律があるらしいですが、結局はスイスを経由して、フランスの原子力の電気を買っている。マネーロンダリングならぬエネルギーロンダリングともいえます。そのようにヨーロッパを見ると、かなりの割合で原子力をベースにしたクリーンエネルギーの形がすでにでき上がっています。
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