北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会「脱炭素化に向けた日本の針路」
【第一部】講演

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エネルギー講演会「脱炭素化に向けた日本の針路」第一部「講演(山本 隆三 氏)」

山本 隆三 氏

常葉大学名誉教授
NPO法人国際環境経済研究所副理事長兼所長

山本 隆三 氏

気候変動を中心とする環境政策とエネルギー政策の研究者。
香川県生まれ。京都大学工学部卒業後、住友商事入社。石炭部副部長、地球環境部長などを歴任。プール学院大学(現桃山学院教育大学)国際文化学部教授、常葉大学経営学部教授を経て、2021年より常葉大学名誉教授。専門はエネルギー・環境政策。経済産業省「国際貢献定量化及びJCM実現可能性調査選定委員会」委員、日本商工会議所、東京商工会議所「エネルギー環境委員会」学識委員などを務めている。月刊誌「エネルギーレビュー」「エネルギーフォーラム」「Wedge」などを通し言論活動も活発に行っている。著書に「経済学は温暖化を解決できるか」(平凡社新書)など多数。

●日本の経済と人口を考える

山本 隆三 氏 今日は「脱炭素化に向けた日本の針路」というテーマですが、最初に、北海道の将来の人口について話をしたいと思います。いま主要国のうち、ヨーロッパ27カ国、英国、アメリカ、カナダ、韓国、日本、これらの国は、2050年に脱炭素化を目指しています。つまり、2050年に二酸化炭素やメタンガスなどを出すのをやめると言っていますが、日本と主要国の社会と経済では大きく違うところがあります。
 何が違うかおわかりですか。一つは日本社会の人口減少です。
 日本の人口は約1億2,600万人ですね。2050年の人口は1億人前後と予想されていますが、2100年の人口予想はいまの半分以下、つまり約6,000万人といわれています。2200年の日本の人口予想もありますが、いまの10%強、一千数百万人です。日本は世界で初めてとなる急激な人口減少社会になっていくわけです。そうした中で、経済力も失われていきます。後でデータをお見せしますが、残念ながら日本人の平均年間所得は韓国を下回りました。そういう中で、他の主要国と同じことができるのかということを考えなくてはなりません。
 今日の話の前半部分を聞くと、気持ちが真っ暗になります(笑)。でも後半は、北海道はどうすれば生き残りを図れるのか、人口を増やすことができるのかという話をしたいと思います。

●少子化が進む日本と北海道

 グラフの赤色が日本です。日本は経済大国で人口が1億2,600万人。でも、2100年にはイギリスやドイツ、フランスよりも人口が減ります。日本はこのように人口が減っていきますが、北海道はどうでしょうか。

 皆さんも北海道の人口が減っていくことはおわかりですね。一方で、ご覧のように札幌の人口はほとんど減らないです。北海道は2045年に400万人を切るぐらいまでに減ってしまいます。

 札幌以外での周辺都市はものすごく減ります。小樽は2045年の人口がいまの半分になると予測されています。札幌に吸い寄せられてくる人がたくさんいるからです。これを見ると、札幌と帯広は人口が維持されることになります。

 非常にわかりやすいのが九州の例です。福岡は最後まで人口が増えます。東京や札幌が減り始めても、福岡だけは2040年ぐらいまで人口が増え続けます。なぜなのか。九州は、新幹線であっという間に福岡に行けます。鹿児島から1時間半で福岡まで行けますね。そうすると人が福岡に集まり始めます。福岡以外の地域の中心都市も残ります。熊本市を例に挙げると、熊本市は人口が維持されますが、その周辺の県や市は大変なことになります。
 なぜ人は、人口が減り始めると中心都市に集まるのか。人口が減り始めると、まず公共交通機関がなくなる。JRもずいぶん廃線になり、これからバスもなくなっていくかもしれません。また、人が減り始めると、道路や水道の維持ができない。水道は維持できても料金が2倍、3倍になっていく。そうすると耐えられないので、元気のある人は大都市に移っていく。そういう姿が、北海道だけでなく日本全体で予想されます。

 ただ、北海道は非常に厳しいです。赤の部分は人口1万人以下の消滅可能市町村です。茶色が人口1万人以上の消滅可能市町村です。消滅可能市町村とは、20〜39歳の女性の人口が25年後、現在の半分以下になる地域です。子どもの数が圧倒的に減っていき、やがてまちはなくなります。これを見ると、札幌や帯広など残る地域はありますが、北海道の多くの市町村はやがて消滅していきます。そうならないようにすることを、われわれは考えていかなくてはなりません。それについては、後半の話と松本先生とのトークセッションでお話ししたいと思います。

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