北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
コロナショックからエネルギーを考える
〜歴史から学ぶ危機脱出のヒント〜

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エネルギー講演会「コロナショックからエネルギーを考える〜歴史から学ぶ危機脱出のヒント〜」第二部「対談(金田 氏 × 神津 氏)
金田 武司 氏

金田 武司 氏

(株)ユニバーサルエネルギー
研究所 代表取締役

工学博士。慶応義塾大学理工学部機械工学科卒業。東京工業大学大学院エネルギー科学専攻博士課程修了(工学博士)。(株)三菱総合研究所勤務を経て、2004年(株)ユニバーサルエネルギー研究所を設立。2018年8月に新著『東京大停電』を出版。現在は、東京工業大学大学院非常勤講師、NEDO技術委員など歴任。

神津 カンナ 氏

神津 カンナ 氏

作家・
「フォーラム・エネルギーを考える」代表

作曲家の神津善行、女優の中村メイコの長女として東京に生まれる。東洋英和女学院にて幼稚園から高等部まで学び、その後、渡米。アメリカのサラ・ローレンス・カレッジにおいて演劇を学ぶ。帰国後、第1作の『親離れするとき読む本』は、体験的家族論として注目され、ベストセラーとなる。以後、執筆活動の他、テレビ、ラジオの出演、講演、また、公的機関や民間団体の審議委員なども数多く務めて精力的に活動。さまざまな分野をクロスオーバーさせて問題提起するその発言や文章は、豊かな感性と冷静な視点に支えられ、幅広い層から支持されている。

●食料もエネルギーも自給が大事

神津 カンナ 氏神津 金田先生のご講演を久しぶりにお聞きして、考えなくてはいけないことがたくさんできました。先ほどのお話の中で気づいたのは、「自給」と「国産」の定義は大きく違うんですね。それで、気になって調べてみたんです。「自前」という言葉がありますが、意味は「費用を全部自分で負担すること」だそうです。「自前の=私の」というぐらいの意味だと思いがちですが、例えば「自前の服」であれば、「私が全部費用を出して買った服」という意味になります。「自前」「自給」「国産」という言葉も意味をきちんと分けて使わければいけないのかもしれません。金田先生、そうすると、太陽光や風力などの新エネルギーは、自給しているとは言い難いものなのですね。

金田 武司 氏金田 そうですね。新エネルギーの生い立ちをもう一度考えるべきだと思います。オイルショックのときにわれわれは何を求めたのでしょうか。中東に依存することの怖さがあったからこそ、自給できるエネルギーを望んだのです。そのために新エネルギーの開発を始めたのであれば、新エネルギーによる自給を問うべきではないでしょうか。日本のメーカーは新エネルギー発電をできる技術を持っていますが、国民から集めた約4兆円が日本のそうした企業にきちんと渡り、生かされているのかどうか。新エネルギーのメーカーは海外ばかりですが、長い時間をかけて培われた日本の技術を使わない。ここが重要なポイントだと思います。CO2削減は避けて通れない課題ですが、もう一度初心に帰って、何のためのエネルギー政策なのかを問い直す必要があると思います。

神津 おっしゃるように、これまで日本は歴史の中でたくさんの教訓を積んできています。でも、残念ながら、あまり身に付いていないというか、何かあると「大変だ」とすぐに浮足立ってしまうところがあって、「困ったら原点に戻れ(Back to the basic)」ということを忘れがちなのかもしれませんね。

金田 その通りですね。コロナ禍で気づいたことは「Back to the basic」だと思います。日本はいろいろな経験をしています。それが日本の復興を支えてきたのだと思います。過去にやってきたそれらのことを横に置いて、新しい議論を始める前に、そもそも何のために始めたのか。オイルショックの教訓を生かして「新エネ」「省エネ」「原子力」を先行したときのことを振り返る。忘れていたヒントがあるのではないかと思います。

神津 日本の食料自給率は約37%ということですが、北海道は200%ぐらいだそうですね。200%というと、国であればカナダやオーストラリアに匹敵します。食料自給率世界一はどこか知っていますか。カロリーベースで300%以上の国は2つしかなく、1位はパラグアイ、2位はアルゼンチンです。これらは国ですが、北海道は一つの地域で200%です。すごいですね。最下位は東京都で、1%以下です。食料自給率でいえば、東京だけでは生きていけないわけですね。


金田 食べ物はわれわれの生命を支えているものだという意識があります。幸い今のところ食料危機にはっていませんが、今後起きないとも限りません。そのときに、東京に住んでいるわれわれはたった1%しか自給できていないということをまず知る必要があります。エネルギーもそうですよね。自分の国でエネルギー供給ができないということを知ったうえで、エネルギー政策として今後何をしなければならないかを議論しなければならないのに、どうもその根幹のところを飛ばしてしまっているように見えます。

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