北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
世界経済を揺るがす エネルギー資源獲得競争!

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エネルギー講演会「世界経済を揺るがす エネルギー資源獲得競争!」

講師 門倉 貴史 氏

(エコノミスト・BRICs経済研究所代表)

門倉 貴史 氏

1971年神奈川県生まれ。95年慶應義塾大学経済学部卒業、同年銀行系シンクタンク入社。99年日本経済研究センター出向、2000年シンガポールの東南アジア研究所出向。02年から05年まで生保系シンクタンク経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表。
現在は同研究所の活動とあわせて、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、TBS「サタデープラス」、読売テレビ「クギズケ!」など各種メディアにも出演中。また、雑誌・WEBでの連載や各種の公演も多数行っている。
『図説BRICs経済』(日本経済新聞社)、『増税なしで財政再建するたった一つの方法』(角川書店)、『不倫経済学』(KKベストセラーズ)、『オトナの経済学』(PHP研究所)、『お父さんのための裏ハローワーク』(方丈社)、『日本の「地下経済」最新白書』(SB新書)など著書多数。

●今年度後半、危機が世界経済を襲う?

 今日は「世界経済を揺るがすエネルギー資源獲得競争!」というテーマでお話をさせていただきます。

 まず、令和元年度後半の経済がこれからどうなっていくのかについてお話ししていきたいと思います。結論から申しますと、今年度後半は世界経済がかなり厳しい状況になってくるのではないかと見ています。皆さまの不安をあおるつもりはありませんが、もしかすると今年度中に、リーマン・ショック級の非常に大きなショックが世界経済を襲ってくる可能性もあるのではないかということです。

 その根拠についてですが、実は過去100%の確率で当たっている経験則がありまして、それは「太陽黒点説」というものです。

 これは、太陽の黒点の増減サイクルと、世界的なバブルの発生・崩壊のサイクルがぴったりと一致しているという法則です。あくまでも経験則で、科学的な因果関係が証明されているわけではありませんが、よくいわれているのが、太陽の黒点の数が増えてくると太陽活動が活発になっているということです。その影響を受けて人々の心理状態が上向きになり、経済活動も活発になっていって、最終的にはバブルが発生してしまうのではないか。また、逆に、黒点の数が減ってくると、太陽活動が停滞しているということですので、その影響を受けて人々の心理状態が下向きに変わり、経済活動も縮小していって、最終的にはバブルが崩壊してしまう。そういった因果関係になっているのではないかといわれています。

 そして、太陽黒点の1回の周期が5〜11年といわれています。この周期と世界の景気の波の周期がぴったりと一致しているということで、このグラフをご覧いただきたいと思います。

バブルの発生と崩壊を予測する「太陽黒点説」

 例えば1980年代後半は、日本で大きなバブルが発生していた時期ですけれども、このタイミングで黒点の数が急増するようになっています。その後、日本でバブルが崩壊した90年代に入ると、今度は黒点の数が急減するようになっています。

 そして、1997年7月にアジア通貨危機が発生していますが、このタイミングで黒点の数が最小となっています。

 その後、90年代の終わりにかけて世界規模でITバブルが発生しましたが、やはりこのタイミングで黒点の数が急増しています。さらにITバブルが崩壊した2000年代初頭になると、黒点の数が急減しています。

 そして、2008年9月にアメリカでリーマン・ショックが発生しましたが、このタイミングでまた黒点の数が最小になっています。

 最新の太陽黒点のサイクルが第24サイクルということですが、このサイクルで黒点の数が急増するようになったのが日本でアベノミクスが始まった2012年ぐらいからということですが、既に太陽黒点の数は2015年にピークを付けていまして、現在は黒点の数が減少する局面に入っています。

 アメリカのNASAの予測を見ると、第24サイクルにおいて黒点の数が最小になるタイミングというのが2019年に当たっています。

  このように太陽黒点説に基づくのであれば、2019年度中にリーマン・ショック級、あるいはアジア通貨危機級の大きなショックが世界経済を襲ってきてもおかしくはないということになります。

●世界経済と米中貿易摩擦のゆくえ

門倉 貴史 氏 では、各国の景気がどのような状況になっているかを簡単に見ていきたいと思います。

 まず、アメリカの景気についてですが、今年度後半は減速感が強まるのではないかということで、その理由を二つまとめています。

 一つは、法人減税の効果が一巡したということです。昨年アメリカは、法人税の税率をそれまでの35%から21%まで下げて大幅な減税を行い、その成果によって、昨年についてはアメリカの企業収益はかなり押し上げられていたところがありました。しかし、ちょうど1年が経過した今年、法人減税による企業収益の押し上げ効果が弱まってくるということがあります。

 もう一つは、世界的な懸案事項となっていますが、米中貿易摩擦のゆくえが視界不良ということで、アメリカの企業家の心理が下向きになっていまして、設備投資や生産活動が抑制されるというところからも、アメリカの景気の減速感が強まってくるのではないかということです。

 それから、中国の経済を見ていくと、昨年の中国の年間経済成長率は6.6%と低い成長率に留まったということですが、今年に入ってからさらに成長が鈍化しています。今年の4-6月期の成長率は6.2%まで落ちていまして、今年1年間の成長率はおそらく6%前半まで落ちるのではないかという見方が大勢を占めています。

 では、なぜ中国の経済が急減速しているのかということですが、やはり米中貿易摩擦の影響が非常に大きく響いているということがあります。いま中国からアメリカに向けて製品を輸出すると、25%という非常に高い関税がかかってくるということで、それまで中国国内で活躍していた企業が次々に関税のかからない中国以外の国に生産拠点をシフトさせています。その結果、中国では、企業の求人が大幅に減り、雇用環境が悪化してきています。

 いま中国政府が発表している正式な失業率は5%となっていますが、これは実態を反映していないといわれています。この失業率にカウントされているのは都市部に住所を置く人のみということで、実際には大量の失業者が発生しているといわれる農村部から都市部に出稼ぎに来ている「農民工」と呼ばれる人たちについては、この失業率の統計には一切入っていません。この人たちも失業率の統計に含めて計算し直してみると、おそらく実態としての中国の失業率、体感的な失業率は、公式統計の3倍以上、15%を超えるようなところまで上がっている可能性が高いということです。

 これだけ雇用環境が悪化していれば当然、消費にも悪影響が出てきます。ここに中国の小売の月ごとの売上高を示していますが、2017年ぐらいから、急速に伸び率が鈍化してきています。

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