北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
エネルギーのこれからを考える
〜日本の政治・経済、そして地方の未来を見つめて〜

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エネルギー講演会「エネルギーのこれからを考える〜日本の政治・経済、そして地方の未来を見つめて〜」

講師 杉村 太蔵 氏

(元衆議院議員)

1979年8月13日、北海道旭川市出身。2005年9月、第44回衆議院議員総選挙で最年少当選を果たし、厚生労働委員会、決算行政監視委員会に所属。労働問題を専門に、特にニート・フリーター問題など若年者雇用の環境改善に尽力。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程所定単位取得退学。現在、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアで活躍する一方、新規創業支援を中心とした新しいまちづくりを提唱し、2022年7月地元旭川市で「旭川はれて屋台村」を開業。2024年1月山口県下関市に「唐戸はれて横丁」を開業。2024年7月より、旭川平和通商店街振興組合理事長就任。

杉村 太蔵 氏

●米中の覇権争いと日本の存在感

 本日はお招きいただきありがとうございます。

 私がどう言われているか、皆さんご存じですか。「薄口政治評論家」です。政治的な中立・公平を守っていると、どうしても言えることが薄くなってしまうので、特定の政党や候補者を支持しているわけではない、ということだけは、あらかじめお伝えしておきます。

 近年、世界の秩序が大きく変わろうとしています。中国が2030年から2040年にかけて、アメリカの覇権的地位を追い抜こうとしている状況の中で、いまのアメリカほど、日本をパートナーとして必要としている時代はこれまでなかったのではないかと思います。

 実は、赤沢経済産業大臣は私の同期で、よく意見交換をさせてもらっています。トランプ関税の件で、ワシントンとの往復は10回にも及んだそうです。その結果、アメリカのラトニック商務長官と親密な関係を築くことができ、関税交渉はまとまりました。

 その中で重要なことは、日本がアメリカに80兆円を投資する件について、メディアでは「日本は80兆円も払わされる。損をさせられるんじゃないか」という懸念がありますが、そういう類いの話ではありません。

 中国がどんなに覇権争いをしたとしても、日本にとって欠かすことのできない経済安全保障上のサプライチェーンを、日米でしっかり構築していくための80兆円であり、「日本が80兆円を払わされる」ということではなく、「80兆円でサプライチェーンを構築できるのか」が重要です。

 特に興味深いのは、日本の造船業を復活させようとしている点です。日本の造船業の地位は低下しており、現在は中国と韓国が世界シェアの大半を占めています。しかし日本は、石油や石炭、ガスなどを輸入するために、船を調達できなければ大変なことになります。そこで「造船業を日米のサプライチェーンの中で支えていく」という狙いがあります。

 また、エネルギー資源についても、アラスカで開発した天然ガスを、同盟国であるアメリカから日本が安定的に輸入できるよう、環境を整えることも、ポジティブな話だと思います。

 もう一つ、高市政権になってからトランプ大統領が来日しました。その際の重要な合意事項のひとつに、「レアアースの共同開発」があります。

 日本の領海である南鳥島沖の海底約5,500メートルには、中国の約13倍に相当するレアアースが埋まっているとされています。海底5,500メートルの泥を採掘するためには莫大なコストがかかるため、民間企業だけではできません。このため政府は積極的に開発を支援し、2026年1月には試験掘削が行われる予定です。もし本格的に採掘できるようになれば、日本が資源大国になる可能性があるという、ものすごく夢のある話です。これを日米共同で開発する合意ができた点が大きなポイントです。

 トランプ大統領がどれだけ強気でも、現在、世界のレアアースの約7割を中国が握っています。中国にレアアースを握られている以上、アメリカは中国に対して、言いたいことが言えない状況が続きます。

 しかし、同盟国である日本でレアアースが採れるとなれば、相対的に、中国の優位性が大きく下がることになります。日米でレアアースを共同開発するということは、その海域での安全性も高まり、非常に良い合意ができたのではないかと思います。

●北海道のエネルギー供給力は大丈夫か

 エネルギー問題にはさまざまな考え方があり、難しいテーマのひとつです。間違いなく言えることは、北海道のエネルギー事情は本当に厳しい状況にあるということです。

  消費者としても、なぜこんなに電気料金が高いのかと感じますよね。致命的だったのは、ロシアによるウクライナ侵攻です。世界中がロシアのガスを買わないよう制裁をかけたことで、もともとロシアからガスを買っていた国々は、別の調達先を探さざるを得なくなりました。その結果、ガス価格が高騰し、そこに円安も重なって、石炭やガスの燃料コストが暴騰しました。

 北海道の電力需要は、年平均で約350万kWだそうで、夏場のピークは約400万kW、冬場のピークが約500万kW。過去最高では約540万kWに達したこともあるそうです。

 北海道では、ラピダスに加え、ソフトバンクによる「北海道苫小牧データセンター」の建設が進められています。報道ベースでは、ラピダスがフル稼働すると約60万kW、苫小牧データセンターがフル稼働すると約30万kWの電力を消費すると見込まれています。これを冬場のピーク需要に単純に足すと、590万kWとなります。供給力が大丈夫なのか、私は本当に不安を感じています。

 皆さん、北海道で一番電気を使わない季節はいつかご存じですか。正解は、9月です。暑くもなければ寒くもなく、日照時間も長いので、電力使用量が少ないのです。

 逆に一番電気を使うのは、クリスマスの少し前くらい。学校も職場も通常通りに動いていて、そこに強い寒波が来ると、電力需要は一気に上がるそうです。

 冬場の電力ピークに加え、ラピダスやデータセンターの稼働を考えると、北海道のエネルギー供給力には不安が残ります。

杉村 太蔵 氏