山本 これをご覧ください。10年間で家電製品の効率がどれだけが良くなったか。エアコンは10年前と比べて全然効率が変わっていません。買い替えるのよりもフィルターを掃除するほうが、よほど電気代が下がります。冷蔵庫を見ると、10年間で消費電力量は3分の1ですから、冷蔵庫は買い替えたほうがいいですね。ブラウン管テレビを液晶に買い替えたら10分の1ぐらいに下がります。
次に再生可能エネルギーについてお話しします。再生可能エネルギーは二酸化炭素を出さないので、地球温暖化には非常にいい影響を与えそうです。

これはドイツの例ですが、風力と太陽光で発電設備の40%ぐらいです。ただ、発電量は風力と太陽光を合わせても10数%しかありません。なぜかというと、再生エネルギーはいつも発電できないからです。例えば、北海道の東側は日照時間が長いですが、太陽光パネルを設置して発電することを考えると、夜間や降雪時にどうするのかという問題が出てきますね。

実はそういう問題に直面している国が、世界最大の再エネ大国デンマークです。デンマークは電気の半分以上を風力発電でまかなっています。北海に面しているので風が強く、洋上に風車を作ったらいくらでも発電できます。
このデータをご覧いただくと、輸出をしながら輸入をしていることに気づくと思います。どちらかをやめればいいのに、やめられないのはなぜか。風が強く吹くのは世界共通で夜ですが、夜に電気を使う人はいません。ということは、デンマークは夜に発電量がすごく増えますが、電力需要がないので、仕方がないから隣国のドイツ、ノルウェー、スウェーデンに電気を輸出しています。だから輸出量があるわけです。
ところが、ドイツもスウェーデンもノルウェーも夜に大きな電力需要はなく、かといって電気を捨てるわけにはいかないので引き取ります。電気が本当に要らないとなったら、お金をつけて引き取ってくださいとお願いするしかありません。一方で、昼間の凪の時は、停電するので電気を輸入します。輸入するときには、当然足元を見られて高い電気を買う。こういうことをやると電気代はどうなるか。デンマークの電気代はいま世界一です。ちなみに世界2位はドイツです。再生可能エネルギーを大きくすると、それだけ電気料金に負担がかかるということです。
そういうことを見ていて、隣のスウェーデンは「2040年に再生可能エネルギーに全て切り替える」と言っていたのをやめ、原子力発電所を全て立て替えて使うと言い出しました。再生可能エネルギーにすると電力コストが約3倍になり、国民生活に影響があるとの試算があるからです。

電気代のデータです。デンマークは再生可能エネルギーが増えたときに上がって、そのまま下がりません。ドイツも高いですね。再生可能エネルギーを増やすのはいいのですが、それなりに覚悟がないとできません。これを安定的に使うとなると蓄電池を入れなければなりませんが、コストが高い。いま世界の主要国が蓄電池の技術開発競争をしていますが、日本は負けぎみです。5、6年前は蓄電池といえば日本メーカーの独壇場でしたが、いまやシェアは10%を切り、韓国、中国、アメリカと競っています。
再生可能エネルギーは二酸化炭素を出さず、きれいでいいですが、その分電気代が上がってしまうのが悩みです。多くの国はいま、これを一時的に中断する方向に入っています。いま熱心に進める政策を活用している国は、アメリカと中国だけと言ってもいい状態だけです。
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