
日本の将来を考えると、太陽光、風力については、大容量の蓄電池とスマートグリッドのような有効なシステムを込みで考えなければ難しいと思います。日本のような小さな島国にとって、スマートグリッドのような新システムの利用は今後重要になると思います。


それで、皆さんに考えてもらいたいことがあります。棒グラフは、年間一人あたりの電力使用量を国別に示しています。多く使っている国はカナダ、アメリカ、韓国、日本などです。世界平均以下の国は、中国、ブラジル、インドの順です。中国は日本の約3分の1。インドはカナダの約26分の1です。これを見て、皆さんは怖いと思いませんか。
何が怖いかというと、円グラフで国別の電力使用量を見ると、1番目のアメリカが22%、2番目の中国が19%、インドは4%です。日本は3番目の5%です。先ほど、一人あたりの電力使用量で見たときには、中国やインドは世界平均に満たなかったですね。
世界の人口割合では5%にすぎないアメリカが電力使用量では22%を占め、人口割合17%のインドは電力を4%しか使っていません。中国の人口は約13億で日本の10倍。インドの人口も12億人を超えています。その人たちが、一人あたりでは世界平均以下しか電力を使っていないのです。そして、中国やインドの人たちも、日本やアメリカ並みに電力を使う権利があり、それを実際に望んでいるわけです。暑いときには涼しくなりたい。寒いときには暖かくなりたい。テレビを観たい、いい音楽を聴きたい。これは人間としての欲求ですね。
そういう世界中の人の権利を否定することができないということは、今のエネルギーの10倍、20倍以上が間違いなく必要になります。今後、地球温暖化もますます加速されるでしょう。これからは日本だけではダメで、世界的なスケールで物事を考えていかなければダメでしょうね。日本のエネルギーをどうするかという問題を、日本人だけで考えてもある意味寂しいわけです。

世界全体のエネルギーについてもう少し考えてみると、南アメリカの電化率は90%、アフリカ中南部の場合は26%しか電化が行われていません。世界には電灯もなく、冷蔵庫も使えず、テレビを見ることもできない国や地域がまだまだたくさんあるということです。

これは、3.11前の世界における原発の建設計画です。中国は2020年までに32基を計画していたことになります。トルコは5基、アラブ諸国は10基。インドは16基。先ほど見たように、インドは一人あたりの電力使用量では世界平均の4分の1以下でした。そういう人たちが「日本並みの生活を送らせろ」と言ったときに、それを否定することはできません。原発は危険だから造るなとは言えないわけです。そうなると、エネルギーについてもう少し大きな視野で考えていく必要があります。
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