秋 元
先ほど「地球自前のエネルギーが0.5%ある」と言いましたが、これは地球の中心にある放射性元素が崩壊するときに出る熱、つまり地熱です。マグマで温められた熱い湯や蒸気が温泉になったり、地熱発電に使われたりします。

しかし、私の言う「地球自前のエネルギー」の本命は原子力です。20世紀前半に、アインシュタインをはじめとするすばらしい原子力学者がたくさん登場し、宇宙で起こっている原子核のエネルギー反応を、地球上で再現できる技術を開発しました。それが原子力技術です。地球上の極めて少量の物質から莫大なエネルギーを引き出せるので、資源確保の点でも問題ない。エネルギー密度も出力も高いので、安定的な電力を作り出せる。ただ、安全性の点で、放射能をきちんと閉じ込めることが大前提となります。また、非常に新しい技術ですから「なんとなく怖い」「放射線の影響はどうなんだ」など世間の皆さんのご心配がありますが、こういう新しい技術の安全性を理解していただくことが必要になります。

放射性物質について少し補足すると、もともと地球は、宇宙の核反応によって生まれた高レベル放射性廃棄物が集まって出来たものだといえます。地球が出来上がった初期には、いろいろな放射性廃棄物がありましたが、半減期の短い元素は段々となくなって行きこの表にある四つの放射性元素だけが残りました。

ウラン238の半減期は45億年です。地球の年齢が46億年ですから、地球が出来上がった時期にあった量に比べ、半分の量が地球上に残っていることになります。ウラン235は一番燃えやすいウランですが、半減期は7万年ですから、地球ができ上がった時期の100分の1くらいの量しか残っていない。しかし、わずかでも残っていたために、人間はウランを核分裂させてエネルギーを取り出す原子力技術を確立することができました。プルトニウムの半減期はもっと短く2万4000年ですから、地球上からほとんど消えてしまいました。原子力開発では、原子炉の中で再生するプルトニウムを仲介者として、ウラン238をエネルギーに変えるしくみを作っているところです。

原子力が基幹エネルギーとして優れている点は、化石燃料を使う火力発電とは違い、運転時に炭酸ガスを出さないこと。もしも日本に原子力がなく、石炭火力しかなかったとしたら、2007年時点で7億トン以上の炭酸ガスが出ていただろうという試算があります。しかし、現実には原子力が動いていましたから、発生量は4億トンで済んだ。この削減量の約3分の2は原子力のおかげによるものです。
地球温暖化防止のためにCO2を減らそうというのは、例えて言うなら、湖から水を汲み出そうとするようなもので、小さなひしゃくで少しずつ汲み出していてもきりがない。より効率のいい、方策が必要になる。それを考えると、大きなポテンシャルを持つ原子力を活用していくことが大事なのではないかと思います。 |