秋 元
エネルギーの種類について具体的にお話しします。

いま注目されているクリーンエネルギーは、大きく分けて2つあります。ひとつは太陽からくるエネルギー、もうひとつは地球自前のエネルギーです。再生可能エネルギーや新エネルギーといわれるものの多くは、太陽からくるエネルギーです。非常に親しみやすくわかりやすいものですが、本質的な問題がいくつかあります。
地球全体の熱バランスのうち99.5%は太陽からくるエネルギーで、非常に膨大です。残り0.5%は地球の中から出てくる地熱です。このように、太陽からのエネルギーは量的に見ればまだまだ使えそうですが、地球の表面全体にばらまかれるため、表面積あたりのエネルギーとしてはかなり薄くなります。

また、自然のエネルギーは非常に変動が大きく不規則です。太陽光は昼間しか得られず、雨の日も難しい。風力の場合、風が強すぎても弱すぎてもいけない。
このように、太陽からくるエネルギーの問題点は「広範囲に分散するエネルギーを集めにくいこと」「条件が変動しやすいこと」「貯めておけないこと」の3つに集約できます。これらの課題を解決しないと、太陽からくるエネルギーをうまく使うのは難しいでしょう。その点、植物は何億年もかけて太陽からのエネルギーを取り込んで使い、何代も生き長らえる方法を知っているわけで、こうした植物の知恵を私たち人間は学ぶ必要があります。
いまの太陽電池の中には、太陽エネルギーを集める効率という点で、植物よりも性能の優れたものが出てきました。ただし、実際に使おうとすると非常に大きな面積が必要です。太陽電池を使って原子力発電所1基分と同じくらいのエネルギーを取り出そうとすると、例えば北海道では洞爺湖の湖面を全部太陽電池で埋めて、エネルギーを集めることになります。湖の下では光が十分に入りませんから、水草も生えないし、魚も生きてゆけなくなる。太陽電池を置く場所によっては、生態系の営みに影響が及ぶことになります。

再生可能エネルギーの中で貯める機能の優れているのが水力で、非常に効率の良いエネルギーです。私も去年黒部ダムを訪れ、その規模の壮大さに打たれました。しかしこの広大なダムですら、原子炉の3分の1くらいの電気しか出せないわけです。ダムを作るにあたって何十年という歳月がかかり、何十人もの犠牲者が出ました。自然のエネルギーを貯めるのはそう簡単なことではないと思います。
|