北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
                 
 【第2部】 「原子力を巡る最近の諸情勢」
(7-7)
 
求められる迅速な情報公開とマスコミ報道のあり方

 しかしながら、なぜこのような大きな騒ぎになったのかというと、先ず言えることは、NHKが大体二日間にわたり、表紙代わりに出した映像です。NHKというのはああいう癖があるのですね。中越沖地震というとあの煙もくもくの映像を毎回出すわけですね。日本人ならまだ解るのですが、あの火災は2時間後には消化していますけれども、スペインでは、NHKが毎回、毎回放送するから、二日位後でもまだ消火していないという放送をスペインのテレビはやったそうです。これはアメリカに行った時に、アメリカの友達から聞いたので嘘ではないだろうと思います。

 それからイタリアのサッカーチームが日本へやって来るのを止めたというのは、みなさんご存知ですね。それから事もあろうに、ソ連は日本海の水をサンプリングして放射能が出ていないかを調べたそうです。このようなお話が出てきていますが、なぜかというと、きちんとした説明を国民にしていないからです。いつの間にか、それが東京電力から話がなかったという声になっておりますが、これは酷い出鱈目だろうと思います。東京電力の諸君は、今言ったように、止めるとか、この火災にしても、消火に行ったけれども、水道の配管が全部破れていて、1m位しか水が出なくて消火出来なかったわけです。

 化学消防車がなかったというのは手落ちだと思いますけれども、それで、消防に連絡しようとしたが、それが連絡場の扉が地震で壊れて10分間位の間、開かなかった。そういうことで、10分位連絡が遅れた。しかし消防が来たのはそれから1時間ちょっと後だった。不思議なことですが、消防は人を助けたり、町の中のことで忙しくて消火には行けないということだった。これは仕事の順番が逆ではないか、消防ですから、先ず火事を消しに行くことが先だと思いますが。道路が壊れていて来られなかったかもしれませんけれども、そういうことを初めは言っていても県は、ピタッとそういうことは言わなくなりました。むしろ事業者から連絡がなかったからという話になる。また、安全委員会、原子力安全・保安院にはすぐに情報は入っていますし、現在原子力発電所は全部停止した、現在冷却をしている、何度までになったということをどんどん発表していれば、当然マスコミも伝えていただろうと思いますが、そういった痕跡はありません。
 恐らく一番初めに問題がないだろうと報道したのは、地震翌々日の読売新聞、朝刊です。現状がまだなにも解っていないところで恐れ入りますがと取材を申し込んできたので、私は、停まっているのではないのか、あまり情報は持っていないけれども、という話をしたらすぐに調べて、その次の朝に、三日目の朝ですが、読売新聞にそういった記事が出ました。それ以降読売新聞は全然ぶれておりません。
 ですから「言わなかったこと」、これは行政の責任です。行政の責任ということは、総理大臣も選挙があったかもしれませんけれども、安倍総理が現地入りしたのは間違っています。災害だったら、総理官邸で指揮をとらなければいけないです。防災訓練でもそのようにやっておられますが、何を思ったのか、のこのこ柏崎までいらっしゃいました。そして「災害は甚大である」とおっしゃいました。県知事もそれに乗って不安だ、不安だと言われたわけです。被災した地方が不安だと言えば、他県民がその後旅行に行く筈がありません。そうしたら今度は風評被害が困る、困ると言っているのですが、これは県知事の態度が悪かったのではないかと思っています。

 また、経済産業大臣も東京電力の社長を呼んで、お叱りになるとか、全電力会社の社長を集めて化学消防車を待機させろとか、どうもピントがずれたようなことが行われたものですから、それに力を得たマスコミが10日間、放射能が漏れた、漏れたと言い続けたのです。原因はそのようなところにあったと考えております。私はそういうところが今からの勉強点ではないかと思っています。

より安全な原子力発電所を造るために

 震災に遭い、被害を受けたことでありますから、これを全部集めて、どういうところに問題があったか、今、東京電力と組みながら、私たち日本原子力技術協会は、調べています。そして原子力産業協会、電力中央研究所と私たち三者が主催して、この2月の26、27日に柏崎の当地で、外国人も来ていただいて、どういう状況であったのかを、民間で国際会議を開いて出来るかぎり、明確に議論をして、直すべきところを訂正していこうと思っています。

 これは今後のより安全な原子力発電所を造るためですし、また、今一つは、この地震が起きましても、先ほどの4月の不正が非常に外国では問題になっております。放射能のリークでは、総理大臣に対して「ない」と言い、その何時間か後には「何々立方メートル」だと言って、それをまた訂正している。これは、日本の電力会社というのは、隠蔽、改竄体質があるのではないか。こういう話を米国の人から聞いて、非常に残念に思いますが、今回の調査は、ピンからキリまで全部出すことで、そのようなことはもう電力会社はやらないということを見せたい。そして日本の、去年申し上げました、日立、東芝、三菱というメーカーがアメリカのウェスティングハウス、GE、フランスのアレバと組んで今後の世界の「原子力のルネッサンス」に対して良い原子力発電所を造っていこう、原子炉を造っていこうという活動に対して少しでも貢献できればと考えていますし、また、それが私たち原子力技術協会の役目であると思っています。

 因みに、今度の地震の国際シンポジウムの中身ですが、地震の力を受けた機械類の健全性というのは、果たしてどれ位保たれているのか、これは実際に検査をしていますから、ものが言えるわけですが、それが一つ。
 それから地震の地盤、地震の大きさというのは、これは理学部の先生たちに考えていただくわけですが、地震が起きたらどのように地盤が問題になってきたかということが第二点。
 第三点は、災害が起きた時にいろいろ問題がありました。火災を消せなかったとか。この間アメリカではハリケーンカトリーナでニューオリンズが壊滅的になりました。あそこには原子力発電所がありましたが、原子炉は停まりました。その時にあった問題、災害時の問題点の話をして、どのような原子力発電所を用意すべきかと、こういった三つの点について、2月の終りに国際的に話しをして、今後の一助にしていきたいと考えています。

 時間もまいりましたので、このあたりで今日は終了させていただきます。今回は「原子力を巡る最近の諸情勢」ですけれども、昨年の諸情勢についてお話をいたしたことになります。そして冒頭に申し上げましたように、今年は再処理ならびにもんじゅの臨界、これをぜひ達成させて日本に元気をつけたいと願っております。どうもご清聴ありがとうございました。

 
【講師略歴】
石川迪夫氏の写真

石川迪夫 (いしかわ みちお)

元:北海道大学教授
現:有限責任中間法人 日本原子力技術協会 理事長
東京大学(機械工学専攻)卒業後、1957年に日本原子力研究所に入所し、安全解析部長、動力試験炉部長、東海研究所副所長。1991年に北海道大学工学部教授。1997年に退官後、原子力安全基盤機構技術顧問など。
1973年〜2004年まで科学技術庁(現文部科学省)の原子力安全顧問や経済産業省原子力安全・保安院の原子力発電安全顧問のほか、IAEA(国際原子力機関)の各種委員会日本代表委員などを歴任。2005年4月より現職。

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