
8年間隠された事故は何故発覚したか
さて、北陸電力の臨界事故ですけれども、これがどうして8年間も隠されたまま発覚をしなかったのか、これが非常に大事な点ですので、そのお話をさせていただきます。
水力発電所のダムは、これは壊れてはいけませんから、毎年、毎年変位を測っているわけですが、そのデータに誤りがあったという話が原子力安全・保安院にあったそうです。その調査をしている時に、火力発電所の冷却水に使っている海水の温度データにもどうやら不正があったという話が出てきました。火力発電所の海水温度の不正ということになると、これは全ての電力会社に係る問題に繋がります。そこで原子力安全・保安院としては、全電力会社に対しまして、この際きれいに過去を清算しようと、遡る期限も設定せず、出来るかぎり正確に調査をするように指示を出したわけです。原子力安全・保安院は火力、水力に加えて原子力も入れたわけです。原子力については、この3年ほど前の東京電力の「シュラウドひび割れ不正問題」の時に、過去の記録に従って全部きちんと調べ、問題は出尽くしているはずなので、原子力からはあまり出てこないと、少し甘い睨みもあったようです。
一昨年になりますが、冬の頃にこういう指示を受けて、電力会社のほうはこのところ真面目でございますから、遡る期限を設けず、原子力などではデータのないところは、延べ7万人といわれているOBにヒアリングを行い問題はなかったかということを調べましたようです。期限がないので水力などは明治時代まで遡って調べたという噂もされております。
(図1)の左側の表が件数です。水力の約9000件、火力が約1200件、原子力は459件の不正が出てきました。事案数というのは大体同じようなものという意味です。全部で1万件余り出てきました。しかし、皆様方の目に留まっているのはほとんど原子力ではなかったかと思います。
それは、原子力安全・保安院ではこれを全部集めて3月末にまとめて発表しようとしたのですが、原子力の場合は地元との協定があり、見つけた時にはすぐ出す決まりがあるため459件のうちの大きなものが、ポロポロというふうに不正が出てきたわけです。
ところがこれが報道されますと、過去のものというふうにはみなさんの目には映らないわけで、現在不正がどんどんと起こっているという感じをお持ちになられたのが、去年の2月から3月頃ではないかと思います。そうしてその極めつけのような最大の問題が北陸電力の臨界事故です。
今ご覧いただいた先ほどの(図1)です、原子力の評価区分と事案数、この中で原子力については右に改めて示しておりますが、ABCDEとなっており、Aというのは、安全問題に多少なりとも関係のあるもので、下にいくほど影響が小さくなるとわけです。
保安院が安全上問題があるとしたものが(図2)にまとめられています。私が見るかぎりは、大きな安全問題と言えるのは北陸電力の臨界事故、それから東京電力で同じく5本の制御棒が落ちていたというものの赤で囲っている二つの事案です。その他は見解の相違というところで宜しいかと思いますが、なにしろ問題があったのは、以上のようなものです。
しかしながら、原子力では少ないとはいえ、こういった問題が起きていたこと自体は素直に反省しなくてはならないわけです。
|