北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
「激動の国際エネルギー情勢と日本の課題」

(3-3)

●G7広島サミットの功績「多様な道筋」

小山堅氏

 2023年は、日本が「G7広島サミット」の議長国を務めた貴重な機会でした。私は、エネルギーと気候変動の分野で「ぜひ一緒に考えてもらいたい」と政府から頼まれ、相当な時間を割いてこの問題に取り組んできました。

 結論を申し上げると、日本は相当頑張ったと思っています。日本は、自国のことはもちろんしっかりやるけれども、G7だけでなく世界の問題解決のためにリーダーシップを発揮したと思うからです。その功績とは「多様な道筋」についてG7サミットの中でしっかりと合意させたことです。

 エネルギーの世界で「多様な道筋」とは何かというと、具体例の一つは水素です。水素は再エネから作ったものでなければダメだという人もいますが、実は化石燃料から作って、出てきたCO2をうまく処理することでクリーンな水素を作ることもできます。それらを多様な道筋として認める考え方もあるし、あるいは原子力も多様な道筋の中の一つです。原子力を認める国もあれば、原子力を使わないと決めている国もある。それぞれの状況において多様な道筋を認めることが大事だと私は思います。

●日本のエネルギー政策の課題

 国内の問題について、2つのポイントだけ申し上げたいと思います。

 1つは、2030年のエネルギーミックスに関連したことです。どの政策もエネルギー分野も、とても難しいです。再エネも、水素の導入も、化石燃料の安定供給もやらなければならず、とても難しいですが、その中でも特に重要でチャレンジしていく必要があるのが、原子力に関わる分野だと思います。

 福島第一原発事故という重大な事故のインパクトが巨大で、運転していない原発が多くあり、再稼働が簡単でないのは当たり前です。でも、もし安全性を確保して、国民の皆さんの理解を得て、それを使うことができれば、極めて効率的にCO2を削減し、電力の安定供給に貢献し、電力コストを下げることができます。

 もう1つが、長期のエネルギー基本計画です。エネルギー基本計画は、概ね3年に1回、閣議決定をする日本国家のエネルギー政策として最も重要なものです。

 いまのエネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定されました。概ね3年となると、2024〜25年頃に次のエネルギー基本計画が策定される可能性があります。

 次のエネルギー基本計画は、脱炭素は当然ですが、新情勢やエネルギー安全保障を最優先とする考え方、世界の分断を意識して新たな経済安全保障の問題も考えたエネルギーミックス、そして今後2050年に向けて日本が世界の中で生き延びていくための成長戦略やサバイバル戦略という、包括的かつ全体的エネルギー政策の議論が不可避になると思います。

 これから日本がしっかりとエネルギー問題に向き合って、政府も産業界も市民の皆さん一人ひとりもこの問題を考えていくことがとても重要になると思います。

日本のエネルギー政策の課題