エネルギー講演会
「コロナ禍の国際情勢とエネルギー」
(2-2)
●コロナ禍で起きた世界の異変と考慮すべきリスク再考
【事情により割愛】
●2050カーボンニュートラルを実現するために
カーボンニュートラルを実現するための手段は電力だけではありませんが、電気自動車が使う電力を考えればわかるように、すべての基礎には電力があると考えるべきですね。では何をすればいいか。政府がカーボンニュートラルを目指すうえでのエネルギーミックスの目安となる目標があります。
再生可能エネルギーが約50〜60%、原子力と化石燃料による火力とCCUS(二酸化炭素回収・貯留技術)で約30〜40%、水素・アンモニア火力で約10%となっていますが、これは参考値ですから、2050年までにどのような割合になるのかはわかりません。堅いところから始めると、水力は現存する分がありますね。おそらく約40〜50%強を水力以外の再エネでまかなわなくてはいけませんが、この風力と太陽光に対して必要な投資規模は60兆円以上ではないかと弊社では算出しています。
欧州は洋上風力だけで99兆円規模の投資を2050年までに見込んでいます。
そもそも日本の3メガバンクの環境融資目標は全体で約30兆円に過ぎないので、再エネだけを見てもその倍は必要です。ということは、日本各地の地方銀行や個人投資家などありとあらゆるお金を総動員してこの投資機会に参画しなければならなくなりますが、それだけではありません。
信頼のおけるマッキンゼーレポートによれば、「ネットゼロの達成には約1,150兆円規模の投資が必要である」とのことです。目が回るような金額ですね。全部が新規ではなく、既存分野の振り替えも含まれていますが、約220兆円は新規であるといいます。
日本は環境関連の技術についてはたくさん語られますが、目標を達成するための大きな戦略と小さな戦略が完全に不足しています。
大きな戦略というのは、例えば目下のウクライナ情勢を考えれば、原子力発電所の再稼働は当然だろうという考えは大きな戦略ですね。そして、ロシアに対するエネルギー依存をどうするのか。ゼロにできるのか、するべきなのかというのも大きな戦略ですね。
そして、小さな戦略とは、カーボンニュートラル実現に向けたこの比率を達成するためにどんな具体的な手段があるかということです。これが今の政府には不足しています。近い将来、先進国にはグリーンを措いて大きな成長投資の機会は訪れないでしょう。今後、政府の規制の総点検を通じ、また投資・融資などの金融力を生かすことによって、目標を実現していくことが必要だろうと思います。ご清聴どうもありがとうございました。

≪エネルギー講演会の様子≫