奈良林 では始めさせていただきます。ムーミンでおなじみの国、フィンランドをご紹介します。面積は33万平方km、日本の約9割です。

うち68%が森林、10%が湖です。人口は520万人で北海道とほぼ同じです。この国は農業国から先進工業国へと急成長しています。携帯電話のノキアというメーカーをご存じだと思いますが、国際競争力では世界1、2位を争っています。また、学力も先進国で世界第1位か2位とのことです。
今、世界では原子力発電所がたくさん作られ「原子力ルネッサンス」が始まっています。実は、この原子力ルネッサンスについて世界で
口火を切った国がフィンランドです。この国は非常に環境意識が高く、美しい森や湖が酸性雨で枯れてきたことから、環境保護のために最新鋭の原子炉を建設することを決定しました。この原子炉はヨーロッパで開発されたもので、160万kWという世界最大規模です。泊発電所3号機は約90万kWですね。フィンランドでは、この原子力発電所が運転を開始したあと、火力発電所の使用を控えて二酸化炭素を低減し、余った電気を輸出するとのことです。
【資料解説】
写真をご覧ください。フィンランドのオルキルオト原子力発電所です。新しい発電所を作りながら、高レベル放射性廃棄物の永久埋設処分をするための穴を掘っています。つまり原子力発電所の"ゆりかごから墓場まで"をここで同時に行うわけです。非常に将来を見すえた選択をした国だと思います。フィンランドが新しい原子力発電所を作るということで、その後世界中に原子力ブームが巻き起こったといっても過言ではありません。
(出典:藤井勲、地質ニュース439号、1991.3)
これから原子力発電所の原理をお話しします。原子力発電所は人類の英知を集めて開発したといわれていますが、実は「天然の原子炉」といわれるウランの鉱脈がアフリカのガボン共和国にあります。鉱脈にはウラン235とウラン238という2種類のウランがあります。核分裂反応をしやすいのはウラン235ですが、フランスがこの鉱脈を掘ったところウラン235の比率が低かった。調べてみると、かつて核分裂したときの核分裂生成物が岩の割れ目の中にたくさん閉じ込められていた。天然ウランを燃料にした天然の原子炉が50万年間動いていた。こういう場所が計16箇所発見されました。
原子力発電所の原理ですが、水と低濃縮ウランがあるとゆっくりとした核分裂が起こります。天然の原子炉もこれと同じです。
【資料解説】
さらに詳しく説明します。ウラン235と238がありますが、核分裂反応をするのは天然には0.7%しかないウラン235です。これを濃縮して3〜5%の低濃縮ウランに変えて原子力発電所で使っています。ウラン235の半減期は7億年。つまり、放射線量が最初と比べて半分程度になるまでに7億年かかります。7億年前は1.4%、14億年前は2.8%、21億年前は5.6%。つまり20億年前に天然の原子炉があったことは、半減期から見てもわかります。
(出典:資源エネルギー庁「原子力2007」)
この低濃縮ウランについてぜひ知っておいていただきたいことがあります。一般の方たちはもちろん、私が教えている学生もそうですが、原子力発電所と原子爆弾の違いがわからない。原子力が核兵器として日本で使われてしまったのは非常に不幸なことですが、原子力発電所で使っているのは3〜5%のウラン235を含む低濃縮ウランです。原子爆弾にするには純度100%のものが必要です。ですから低濃縮ウランを使っている原子力発電所は爆発することがありません。非常にゆっくりと反応するので、人間がコントロールできます。そのように、原子力発電所と原子爆弾の違いはウラン235の比率によります。
(出典:資源エネルギー庁「原子力2007」)
【資料解説】
これは原子力発電所を示した図です。原子炉圧力容器の中に、ウラン235と238を焼き固めたペレットを入れた燃料集合体と水を入れて核分裂反応させます。加圧水型では1次系の水が沸騰しないように加圧し、蒸気発生器で別系統の水を沸騰させ蒸気を発生させます。それで蒸気タービンを回して発電するしくみです。
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