北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 【第1部】 「女優生活と最近の社会」 (抜粋)
(2-1)


講師:萩尾みどり氏 (はぎお みどり)
(女優)


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 皆様こんにちは。萩尾みどりでございます。
 札幌の皆さんは、環境問題に深い関心をお持ちなのでしょうか。私は全国各地へ講演に行きますが、これほど大勢の方が集まってくださることは、そんなにはありませんから、今日はとても嬉しく思います。



日本の生活は発展途上国なら王様並み

 仕事では、先進国にも発展途上国にも行きます。私は特に発展途上国のほうが好きで、同じ時代に生きている人間同士がこうも違うのかと思うくらい、大変な生活をしている人たちが世界中にたくさんいることを実感します。だから日本に帰ってくると、本当にありがたいと思います。蛇口をひねると飲み水が出てくるのは、それだけでもすごいことですし、電気も使い放題ですね。でも、発展途上国に行くとそうではありません。

 いつでも飲み水が出る、いつでも電気が使える生活というのを、日本人はごく普通と思っていますが、発展途上国ではいまだに電気のない村もありますし、飲み水をまったく確保できない人たちもいます。それに比べれば、日本の生活は王様並みといえるでしょう。
 「そんなに私たちは恵まれていない」と思うかもしれませんが、私たちのごく普通の生活は、エネルギーを大量に消費することで成り立っています。洋服一枚にしても、エネルギーをたくさん使ってでき上がっています。いまはキュウリもトマトも一年中ありますが、どんな野菜もエネルギーを使って並べられている。そのように、生活自体がすでにものすごいエネルギーを必要としているのだということを、普段私たちは忘れがちになっている気がします。



京都議定書の拘束期間が始まる

 昨年12月、バリ島で地球温暖化防止会議が開かれました。この会議が京都で開かれたのは1997年で、ちょうど11年前になります。あのときは、連日新聞で温暖化のことが謳われたので、「温室効果ガスを減らしましょう」と日本中で盛り上がりましたが、2、3年後には忘れ去られた感じになりました。1997年の会議で決まった京都議定書が、すったもんだのすえに発効したのは8年後の2005年。発効した以上は、京都議定書で決まったことをやらなければいけない。この“やらなければいけない期間”が、今年4月から始まります。2008年〜2012年の4年間で、京都議定書に決められたことを日本がやらなければいけないという意味です。温暖化といっても、別に私たちの日常生活がすぐ変わるわけではありませんから、多くの人にとっては他人事なのかもしれません。



地球温暖化で沖縄がマラリア蚊の生息地に

 温暖化といえば、多分皆さんも砂漠化などについておおまかな知識はあると思います。例えばマラリア蚊の生息地が上がってきています。また、人気の沖縄に移住したいという方がたくさんいらっしゃいますが、沖縄はあと数年すると、マラリア蚊の生息地に入ってしまうかもしれません。日本人はマラリアに対する免疫はまったくありませんから、マラリア蚊が北上してくると、私たちにとっては大変なことになると思います。
 温暖化によって海水面が上がるという問題も、しばらく前までは2100年ころの話と言われていた。それが何年か前から2070年、去年あたりから2050年、いやいや2030年と、どんどん短くなっています。温暖化の影響というのは、それほど加速度的になっているようです。おそらく多くの方は、国が対策を講じなければだめじゃないのかと思われていることでしょう。

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1990年以降に増えた電化製品を捨てなさい

 もちろん、国もいろいろやっていますが、一口に「温室効果ガスが増えた」といっても、日本の産業界では1973年、つまり35年前と比較しても温室効果ガスの量は全然増えていない。オイルショックのときに、国から省エネに力を入れるよう言われて一生懸命努力してきたので、それ以降は産業界では増えていないのです。
 しかし一方、日本全体で非常に増えているのは、家庭・オフィス・運輸部門です。ですから、京都議定書で「温室効果ガスを減らしなさい」と言われているのは産業界ではなく、私たち生活者のことなのです。

 今年4月からその削減期間が始まるので、国は産業界に更なる削減を求めています。産業界も必死ですが、生活者の私たちが何もしなくていいわけではありません。むしろ、私たちが何とかしなければどうにもならない。温暖化対策を人任せにしている場合ではありません。温室効果ガスの多くは、私たちが増やしているのと同じですから。
 例えばエアコンは、1990年に比べると、ものすごい勢いで増えています。昔は各家庭に1台だったのが、いまは各部屋に1台。自動車も1台だったのが、いまは2台目に軽自動車があるというくらい、私たちの生活は変わりました。京都議定書では1990年比で6%削減と謳われていますが、それは私たちに対して言われていることだと思います。
 詳しいことについては、このあとに講演してくださる石川迪夫先生がお話になると思いますが、極端な言い方をすると、「1990年から家の中に増えた電化製品を全部捨てなさい。さらにそこから6%のものを捨てなさい」という意味と考えていいのではないかと思います。
 1990年というと18年前です。私たちの生活を18年前に全部戻す、果たしてそんなことができるのでしょうか。わが家で18年間に何が増えたかというと、エアコン1台、ほかにパソコンやプリンタ、スキャナー。それらをなくして生活していけるかと考えると、もう無理だなと思います。だとしたら、代わりに何か必ずやらなければいけない。捨てられない代わりに、すべての人が何かやろうと思えば、かなりのことができそうな気がします。

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